推理小説的妄想に導く絵画

S氏の推理小説的日常

私の飲み友達のS氏は、現在、「フェイク・ワールド」、「笑う猫」という2冊の推理小説を世に出している。さて、このS氏は自分で油絵を描くのだが、描くだけでなく絵を見るのも大好きである。好きな画家はというと、マチス、そして、松本竣介

松本竣介氏の作品「都会」にインスパイアされて、彼は自身の小説「フェイク・ワールド」の表紙を自ら描いたのだという。S氏は、松本竣介氏の作品に、ミステリアスな推理小説の趣きを感じるそうで、例えば、絵の中で橋の中央に黒い人影がぼんやりと佇んでいる「Y市の橋」という作品は、まるでミステリー小説の冒頭の部分、あるいはエンディング部分の雰囲気がある、と言う。

松本竣介氏は耳が不自由であったそうだが、彼の作品を貫く静謐さは、音の欠けた静謐さではなく、音を必要としない静謐さのようだとS氏は言う。音は空気の振動だが、それはまるで凪のような静謐さなのだと言う。

さて、S氏は最近「短編画廊」という本を読んだそうだが、この本は、アメリカの画家エドワード・ホッパーの絵をテーマにアメリカの作家たちの書いた短編を集めた本で、S氏もいつか松本竣介氏の「Y市の橋」にインスパイアされた作品を書いてみたいそうだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました