名作「刑事コロンボ」に見る必死の掛け方(1)

名探偵見聞録

「必死」とは将棋用語で、絶対に負けしかない、相手の次の王手で詰まされてしまう状態になったことを指し、犯人がコロンボの捜査によってもはや逃げられないお手上げ状態となっていることを、このコラムでは指しています。そして、コロンボがどのように犯人をこの「必死」に追い込んだかを、将棋の用語を使ってこのコラムでは分析します。

◎第1話 「殺人処方箋」(120分/1972年12月31日NHK総合TVにて放送)

まだシリーズ化が決まっておらず、単発ものとして制作。

(原作・脚本)リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク(★1)

(監督・製作)リチャード・アーヴィング(★2)

(ストーリー)エリート精神分析医が考えたアリバイ工作のトリックを、コロンボが犯人に同じトリックを使う事によって共犯者の自白を引き出し、見事にアリバイを崩す。

(出演)犯人役 ジーン・バリー

  • 犯人が犯罪に使ったトリック 「人は固定観念でものを見る」
  • 殺人方法 扼殺
  • コロンボが逮捕に使ったトリック 「人は固定観念でものを見る」
  • 必死の決まり方 「両王手」

物的証拠が一切なく、共犯者である愛人女性の自白でしか逮捕できないことを知ったコロンボは、愛人女性の自白を引き出すにはどうすべきか考える。そして、彼がとった犯人逮捕への必死のかけ方は「両王手」であった。

婦人警官を愛人女性に扮させプールで溺れたように見せ、愛人が死んだと犯人の精神科医に信じ込ませた、コロンボ(これは、犯人が愛人を、殺した自分の妻に扮装させたアリバイ工作トリックのまさに切り返し!)。そして、愛した人が死んで悲しいかと犯人に問いかけるコロンボ。これが、実は「両王手」であった。

王手1は、悲しいと犯人の精神科医がいえば、その女性が愛人であり、その愛人を愛していたことで妻殺しの動機があったことを、自らコロンボに認めたことになる。

王手2は、王手1を否定して、愛人を愛していなかったと精神科医が言えば、陰で精神科医に分からぬようにそれを聞いていた愛人女性が、自白しなかった動機、その女性が精神科医を愛していて彼も自分を愛していると信じていた、精神科医への愛情を崩させることになり、自白に繋がる。

つまり、どちらを選択しても、犯人は追い詰められる仕組みになっていたのだ。

そして、以下はドラマに描かれておらず、あくまでも私の推測だが、この愛人女性が精神科医の元患者で精神的に不安定になりがちで、恐らくあなたは利用されただけだ、というコロンボが言ったであろう言葉に疑心暗鬼になり、事件後アリバイ工作のために一生懸命で愛人女性に冷たくなっていた精神科医の態度から、愛しているかどうか確かめてみませんか、というコロンボの言葉に、それが精神科医を追い詰める事になるとはうすうす分かっていた筈だが、思わず乗ってしまったのだろう。

(★1)リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク

刑事コロンボを生んだ黄金の作家コンビ。推理小説の世界では、エラリー・クイーンがコンビでの執筆が有名だが、このコンビも理想的なコンビであった。「コロンボ」「エラリー・クイーン」「ジェシカおばさんの事件簿」などのシリーズを生み出した。このコンビが生み出したミステリドラマの傑作「殺しのリハーサル」や、サスペンスアクションドラマ「ジェットローラーコースター」は、DVD化されていて見ることが出来る。

(★2)リチャード・アーヴィング

コロンボ役にピーター・フォークを押したことで、このドラマの成功へ大きく貢献した。

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